鬼物

鵺 ぬえ

旅の僧が都に上ろうと摂津国芦屋の里に着く。所の者に宿を頼んで断られ、夜な夜な光るものが出るという州崎の堂に泊る。すると、不思議な怪しい姿の舟人がやって来て、自分の心の闇を弔ってほしいと頼む。どのように見ても人間とは思えないので、僧が名を問うと、源頼政に退治された鵺の亡魂であると名のり、請われるままに、頼政の矢先にかかった有様を物語り、また、うつほ舟に乗り、恐ろしい鳴声を残して、亡鬼は消えてゆく。〈中入〉
僧が回向をしていると、鵺の霊が真の姿を現し、頼政に退治された子細を、仕方話に再現する。ある場面では頼政になり、剣を賜り、和歌を朗詠し、また、鵺になり、射殺(いころ)され、うつほ舟に押しこめられて、淀川に流された有様を語り、昔のごとく海月とともに消えてゆく。  非体制の敗者の哀感を鵺の運命にこと借りて描いたもの。シテは妖怪ながら、人の心を持った、世阿弥のいう「形鬼心人」の砕動の鬼で、世阿弥が修羅物の作能遍歴ののち、鬼に却来して書いたと考えられる。

PAGE TOP